これでいいのか日本のメディア(3)

 シリーズ「メディアを考える大阪集会」(3)は、4月14日(土)90名を超える参加者で大阪社会福祉指導センターホールで開かれました。


 

「今、NHKに何を求めるか」のタイトルで、戸崎賢二さん(放送を語る会運営委員・元NHKディレクター)が講演。番組・ニュース・最高裁判決から考えるとして、①「政府からの独立」という基本を政治報道に貫くこと②視聴者の経営への参加と対話の拡大③暴力的・威圧的な受信料契約の強制・口座振替強制を止めよ、とNHKに求めることを、番組のDVD再生を交えて講演いただきました。熱を帯びた質疑応答もあり、終演が大幅に延伸するものでした。

 講演のレジュメは下のPDFをダウンロードしてお読みください。 

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メディアを考える大阪集会・これでいいのか日本のメディア(3)
180404「メディアを考える大阪集会」講演レジュメ・資料(戸崎賢二).pdf
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講演のリポート 楠本宏さん(放送を語る会・大阪会員)

 <はじめに>メディアにたいする市民の「監視」の意味

  憲法前文「…政府の行為によって再び戦争の惨禍が起こることのないようにする…」から、メディアは政府を監視、そのメディアを監視するのが国民であるとの説明に、政府の暴走を監視するメディアに「もの言う」ことが国民の責任であることが理解できた。これまで私はメディアに対して、あまり「ものを言って」いなかったことを考えさせられました。

  

NHKに求めること(1) 「政府から独立」という基本を政治報道に貫くこと

  NHKの政治報道に「ネグレクト」と「忖度」の2つの特徴があるとして、共謀罪法案審議の際のモニター活動(放送を語る会)の結果から、「保安林でキノコを採るのがテロ資金源なのか」など、国民がもつ重大な関心事について、TBSやテレ朝は報道しているが、「NHKニュースウオッチ9」では伝えられなかったこと。「クローズアップ現代」の担当者が、加計学園の「設計図」を入手したスクープがあったが、お蔵入りになっていつまでも放送されず「報道ステーション」や「NEWS23」が大々的に報道されたことなど、NHKが政権側の主張や見解はできるだけ効果的に伝えるが、批判を招くような事実や反対運動などは報じない「ネグレクト」の姿勢を批判された。

 「クローズアップ現代+」(2017619日放送)~波紋広がる“特区選定”独占入手・加計学園“新文書”~で、通常放送枠は25分であるが、この日は5分拡大で30分の枠で放送された。政治部の圧力で政治部の記者を出演させる事になったと報告。

 

私は、昨年の放送では政治部の記者が政府の代弁者のようで、違和感を感じていたが、今回の講演で番組枠が5分拡大された事を知り、改めて録画をチェックすると政治部記者の発言は3回で4分52秒に亘っていて、NHKが政権に「忖度」している姿勢について、具体的に理解が深まりました。ただ、最近NHKの番組に変化の兆しがみえているが、政権の力が落ちてきた時期に合っているのではないか、安倍批判の声が大きくなれば、NHKの番組内容が変わる力になるとの説明がありました。

  

NHKに求めること(2) 視聴者の経営への参加と対話の拡大

 視聴者は受信料を払っているが、NHKに対して何も権利を行使することができない現実があるが、会長推薦、公募制を設けること必要であると、これまで「放送を語る会」が会長候補を推薦する運動など、NHKに求めてきた事を紹介。難しい事であるが、各種団体でも会長候補を推薦することなどを検討していただくようにとの訴えがあった。

  

NHKに求めること(3) 暴力的・威嚇的な受信料契約強制・口座振替強制を止めよ

 各地でNHKの委託法人の訪問員の暴力的な行為が問題になっている。訪問員がドアに靴を挟んで大声で受信料払えと威嚇するなどで、住民が警察を呼ぶことも起こっている。NHKの受信料制度の根幹を深く教育することなく、委託法人の訪問員(歩合制?)が契約件数を上げるために強圧的な方法を行っている可能性も指摘された。

 

NHKへの圧力・介入を可能にする制度

 NHKの最高決議機関である経営委員会の経営委員は両議院の同意を得て内閣総理大臣が任命する。最近の経営委員には、総理のお友達や、企業人・財界人が任命されていて、放送・ジャーナリズムについては素人の人が経営委員になっていることに問題がある。例として、総理のお友達と巷間言われている、長谷川三千子委員は「日本の国柄というのは、本来、国民が天皇のために命を捧げる、そういう国体である」明治憲法について「帝国憲法がこんなにいいもの」と発言していることも紹介。さらに、総務省がNHKを監督し、NHK予算は国会の承認事項で、どうしても時の政権の意向、圧力を受けやすい制度となっていることも報告された。

  

講演の後の質疑応答(メモを取っていないので記憶に残っている内容)

 Q.ETV2001で慰安婦問題を扱った番組が改変された問題で質問が出されました。

 A.放送前に右翼の街宣活動や、安倍官房副長官などから呼び出しを受けるなどがあり、番組に直接関わりのない、上層部が忖度して番組を改変するように圧力をかけてきたことなど、詳細に回答されていた。その後も慰安婦を扱った番組の提案が却下されている状況も報告された。

 

Q.NHKはなぜ政府批判の番組が出せないのか

 A.NHKの経営体制は、総理がNHK経営委員を任命し、経営委員が会長を決め、その会長が執行部である理事を決めること、NHK予算は、国会承認のため与党の賛成が不可欠で、NHKは人事・予算で、総理・政府与党の支配を受けているので、逆らえない構造になっている。

 

 

 

*講演:今、NHKに何を求めるか 

  ニュース・番組・最高裁判決から考える 

  講演 戸崎賢二さん

  (放送を語る会運営委員・元NHKディレクター)

 

*日時:4月14日(土) 14:0016:30

会場:社会福祉指導センターホール

  (最寄駅:地下鉄谷町線・谷町六丁目) 

 

*参加費:1000円  

 

主催:メディアを考える会大阪集会実行委員会

  (NHK問題大阪連絡会、日本ジャーナリスト会議関西支部、放送を語る会・大阪、大阪革新懇) 

 

 第2回 「なぜ日刊ゲンダイは権力批判を続けられるのか」 2017.10.7

      講師:橋詰雅博さん(JCJ事務局長・元日刊ゲンダイ)

     参加者 約60  

 第1回 「ポスト・トウルースとフェイクニュースの時代

      真実の報道目指し闘うメディアへの期待」 2017.4.8

     講師 隅井孝雄さん(JCJ関西)

     参加者 約70人  

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メディア状況への認識を深めた集い 服部邦彦
「マスコミ市民」2017年6月号より
これでいいのか日本のメディア①.pdf
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