服部邦彦(放送を語る会・大阪)

 NHKスペシャル  廃炉への道2021 原発事故10年の軌跡  3月14日放送

 

・2011年3月の東日本大震災時に、福島第1原発の事故が発生したが、「NHKスペシャル」では、2014年 の第1回から7回にわたり「廃炉への道」と題して系統的に取材・放送してきた。

・今回の放送を見て、あらためて認識したことは、福島第1原発事故が世界最悪レベルといわれる事故であったということ、原発事故の状況が1~3号機でそれぞれ異なり、対応も複雑であったことが詳細に明らかにされたこと、廃炉まで40年以上かかること、数万年にわたって放射線を出し続ける核燃料デブリが推計880トンに上ること、その核燃料デブリを取り出す作業がいかに困難で大変なことかということ、また、760万トンといわれる膨大な放射性廃棄物の処分が方法によっては100~300年かかる可能性。この廃棄物をどこで処分するか。県内か全国で分担するかなどの問題である。

・さらに原発の敷地にたまり続けるデブリを冷却した汚染水を処理する方法について議論になっている問題、1日に発生する汚染水の量はおよそ140トン。汚染水を処理した処理水を保管する1000基余りの巨大タンクは間もなく許容限度を超える。専門家でつくる小委員会は、処理水を大気中か海に放出することが現実的だと提言しているが、地元住民、漁業関係者の不安、反対が強いことは当然だと思う。この問題について国の公聴会が開かれたが、国は住民の意見を聞くだけで積極的に答えようとしていないことに怒りを感じた。

・当初2兆円とされていた廃炉費用は、今では8兆円と試算され、さらに膨らむ可能性があることについて驚き、いかに大きな事故であったかということ、「廃炉への道」の厳しさを認識した。 

・今なお多くの住民が避難先から帰還できないでいることも深刻な問題、復興も道半ばであることを痛感した。

・また、2013年9月に、東京五輪招致に向けたIOC総会の場で「(福島原発事故の状況は完全に)コントロールされている」と発言した安倍首相(当時)の発言のでたらめさ・無責任さが改めて証明され怒りを新たにした。

・「廃炉への道」を詳細に取材した優れた番組であったが、事故の責任者である東京電力や国の、地震・津波の予知や原発事故防止対策の不十分さの責任について触れていないことに物足りなさを感じた。