「桜」夕食会費用補てん問題の新聞報道について

                                平林 光明(大阪)

 12月22日から23日にかけての新聞・テレビは、各社とも1面トップ級の扱いで、「東京地検 安倍前首相を任意聴取」と伝えた。7年8か月の在任中、モリカケ・桜など疑惑と隠ぺいまみれの安倍氏だけに、辞職と同時に検察が動くのは当然で、国民もどこまで解明してくれるのかと、期待したことだろう。しかし各社ともサブ見出し的に「不起訴の方針」と合わせて伝え、まるで捜査終結へのセレモニー的聴取という印象を与えてしまった。確かに今回は「桜を見る会前夜祭の費用補てん」に関しての聴取だったので、安倍氏と秘書が口裏を合わせ「秘書の独断」と言い張れば、立件は難しいだろう。しかし聴取の内容も結論も明らかになっていない段階で、物知り顔で見通しを述べるのがマスメディアの役割だと考えているとしたら、国民の期待に応えているとは言えないだろう。これを突破口に他の違法行為に食い込んでいくとか、色々な疑惑を明らかにする検察への国民の要望を代弁してほしかった。
 同時に国会審議で118回も虚偽の答弁をしたことが明らかになっているのに、自民党は非公開の参考人聴取で済まそうとしていることについても、マスメディアの役割が果たせているとは言い難い。安倍氏が嘘をついたのは議員に対してだけでなく、テレビ中継を見ている多くの国民にも嘘をついたのである。これを考えれば、安倍氏は国会議員に非公開で答えるだけでなく、国民に対して、公開で“口癖”の説明責任を果たし、謝罪するのが筋であろう。メディアには与野党の攻防を解説するだけでなく、国民の要求に応えるよう主導性を発揮してほしい。