8/2 NHKスペシャル「沖縄 出口なき戦場~最後の1か月で何が~」


 米軍の5000ページに及ぶ作戦報告書と住民・旧日本軍将校の証言テープを基に、沖縄戦最後の1か月を詳細に検証した優れたドキュメンタリー。
 日本軍第32軍の高級作戦参謀八原博道大佐の録音テープが衝撃的(すでに発掘紹介されているものと思われるが)。幹部間の議論で、本土決戦の時間稼ぎのために持久戦を主張、「南部撤退」「洞窟戦法」を主導したことを誇らしげに証言。番組最後の「3か月の持久戦で任務を果たした」という証言は、兵や住民の膨大な犠牲など眼中にないことを鮮明にしている。しかも本人は捕虜になって、幹部として唯一生還したことを臆面もなく語っている。日本のエリートとはこんな輩かと腹立たしい。
 番組は、軍の「南部撤退」に伴って多くの住民が軍に同行した沖縄戦最後の1か月を現存している住民の証言、残っている住民の証言テープなどを基に検証している。
 多くの住民が犠牲になったガマ・轟壕に焦点を当て、記録映像・写真や米軍作戦報告書、そこに立てこもった桃原きくさんの証言テープなどで当時を再現している。
南部に逃げる途中、艦砲射撃の集中した「山川橋」近くで母親を亡くしたこと、壕から投降しようとする住民を「撃て!」と日本軍がガマの出口に機関銃を備えたこと、食料が無くなり、兵に黒糖を取り上げられ、抵抗する子どもを撃ち殺した光景を見て「友軍が敵」と見抜いたこと、親族で自決を覚悟して取り囲んだ手りゅう弾が不発で生き残れたことなど、証言はどれも生々しく衝撃的。戦争の悲惨さが伝わる。
桃原きくさんの子、城間洋子さんのテープを聞いたリアクション、きくさんの孫やひ孫たちの元気な姿を最後に描き出す構成は、戦争体験を次の世代に継承してゆくことの大切さを、制作者が静かに訴えていることを感じさせる。    (小滝一志)