8月6日19時30分から、NHK総合で放送された夕凪の街桜の国2018」は、広島原爆記念日にふさわしい優れたドラマだった。原作は漫画家こうの史代さんの代表作で、以前映画化された時には、多くの賞を取った作品である。これを世界で唯一の被爆放送局となった広島局が、開局90年の節目として、現代を2018年に置き換えて制作したものである。父の行動を不審に思った娘と姪が、後を付けて広島に行き、被爆後10年若くして亡くなった伯母や周りの人々の、被爆を隠しながら発病におびえる日常や、被爆後の広島の惨状に思いをはせる物語である。
”原爆スラム”と言われた厳しい生活も描かれていたが、叔母が死に際に発した「原爆を落とした人たちは10年後にも1人殺したと喜んでいるのだろう」という叫びが、今も耳に残っている。それとこのドラマには恐らく丸木位里夫妻の、被爆直後の目を背けたくなる図絵が繰り返し出てくるが、主演の常盤貴子さんが「原爆投下直後の表現をやわらかくすればするほど忘れられると思う。子供が見て衝撃を受けるけど、それはすごく重要なことだ」と広島局の姿勢を評価しているが、大事なことだと思う。私も小学生の時、街の小さな公民館であった原爆写真展で、生々しい被爆直後の生々しい写真を見たショックが、原爆反対の原点になっている。1人1人の葛藤ををもっと掘り下げ、2時間ぐらいでも十分飽きない内容だった。