2021.3.7 佐藤善次郎(放送を語る会・大阪)
NHK宮城発地域ドラマ ペペロンチーノ 3月6日放送
久しぶりに心から納得できる出来栄えでした。
ネットで調べてみたら、プロデューサー、演出ともドラマ一筋の人でなく、全くビックリです。 総合再放送は東北地方だけのようですが、これは全国放送する値打ちあるドラマです。
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2021. 6. 3 佐藤善次郎(放送を語る会・大阪)
宮城発ドラマ「ペペロンチーノ」二度見
イタリアンレストランのオーナーシェフ小野寺潔(草彅剛)が、実は最愛の妻灯里(吉田羊)を震災で亡くしていたことが、
最後に明かされるドラマです。
とても素敵なドラマでしたが、二度見した理由は、ファンタジーをどう表現していたかに興味が湧いたからです。
予想は、潔と灯里のショットを主観にして、それ以外の出演者が絡む客観ショットを避けた映像にするというものでしたが、
違っていました。映像で同時に映るだけでなく、演技でも絡んでいました。これをどう捉えればいいのか。
同じような設定で、「パーマネント野ばら」(2010年)という映画があります。
主人公・なおこ(菅野美穂)の恋人カシマ(江口洋介)がすでに亡くなっていたということが最後に明かされます。
こちらは、二人のシーンには他の登場人物が絡まず、微妙にひっかかりを作って少しずつタネあかしをしています。
違うのは、映画の方はこのことを肯定的にはとらえていないということです。
主人公なおこの周りには、人生をハチャメチャに生きている女性が何人もいますが、普通に見えていて実は一番正常ではなかった
のが、菅野美穂が演じるなおこだったという、衝撃的な描かれ方をしています。
「ペペロンチーノ」は少し違います。最後に真実が明かされても誰も驚きません。
周りの人も被災者で、悲しい事、苦しい事をかかえて生きていることを共有し、認め合っているのです。そして懸命に生きている。
憐みの対象としての「被災者」ではなく、「人」として。
そのことは潔の、「俺は被災者じゃない」「料理人です」というセリフに表れています。
震災の体験を「重荷」として描くのではなく、前を向いて一歩ずつという姿に共感を覚えました。
短く積みかさねられた灯里のいない潔だけのカットが、単なるタネあかしでなく、切ない感情として伝わり、余韻を残しました。
誇りを持って生きている東北の人びとに「乾杯」です。