山村恵一(放送を語る会・大阪)

 ETV特集 選「義男さんと憲法誕生」 放送 2021.5.8.(土)午後11:00~

 

 福島県出身の法学者で、ギダンさんの愛称で親しまれ日本国憲法の制定に関わった、鈴木義雄の生涯を描かれた特集である。憲法「改正」の声がかまびすしいいま、日本人自身の手で新憲法の平和主義や生存権が加えられた経過を示す放送に大きな意義がある。

 鈴木義雄は東北大学の教授時代、軍事教練は殺人教練だとして反対し”赤い部類”として教壇を追われ、弁護士に転身後、川上肇や宮本百合子など治安維持法違反者の弁護にも尽力。敗戦後、衆議院議員となると憲法制定小委員会のメンバーとして、第9条で平和維持の規範として「恒久平和」をはじめ第25条の生存権を追加、国家賠償権や刑事事件請求権もギダンさんらの提案で実現、三権分立の確立を目指して尽力していたことも、ギダンさんの生い立ちや新資料から描かれている。

 第25条の生存権は、戦後の貧困で餓死者が出る中、ドイツのワイマール憲法の社会権に学び、最低限度の生活できる権利と、国家には生活保障の義務があるという意味を明確にさせた。いま、公助の前に自助だと国民の窮状に後ろ向きの政治・行政に、憲法25条の精神にもとっていないかと聞きたい。

 日にちに猶予はありませんが、5月15日までNHKプラスで視聴できます。