20121.1.2 平林光明(大阪)

 

コロナに明け暮れた1年をを象徴するように、東京で1300人超、全国では4500人超と驚きの感染者を出した去年の大晦日。NHKの「紅白歌合戦」は無観客という異例の形で行われた。4時間も持つのかと心配されたが、逆に観客を意識しない演出で、歌をじっくりと味わえる良い音楽番組に仕上がったといえる。最近の演出は大勢のバックダンサーや出演者の応援、お笑い陣の動員でとにかく華やかに盛り上げる傾向が強く、煩わしささえ感じさせたが、そうした不要な部分をそぎ落とし、歌そのものを聞いてもらう姿勢が前面に押し出されていた。経験したことの無い今年を意識して、メーッセージ性の高い楽曲を選んだ歌手も多く、「歌おうみんなでエール」のコンセプトがより活かされていた。
昭和人間には年々横文字やカタカナ歌手が増え、まるで1年のお勉強の時間の感じもあるが、ゲストの北島三郎さんが「最近の歌手は自分たちの頃と違って、世界を意識している」という発言になるほどと受け入れる気になった。
 一方、良い音楽番組だったと思うと、“紅白”歌合戦というエンタメ性の重しも余計気になる。大トリのMISIAさんも「赤とか白とかでなくみんなで」と言っていたが、性別に対する意識も変化している現代に、いつまでも赤白ではないだろう。いろんな人が出て歌を披露しあうのだから、「紅白歌合戦」にこだわるのならタイトルとしてはそれでもいいだろう。ただ、無理やり「赤組」「白組」に分け、優劣を競うやり方は もうやめてはどうだろう。今回も出演者がそれぞれにテーマに向けて1つになった後、唐突に採点をと言われ、場にそぐわない感を強く持った。しかも時間が押して、あくせくと視聴者投票を求め、どたばたと優勝旗授与とスケジュールをこなしたのは滑稽でさえあった。特別審査員は何の役を果たしたのかも説明する時間が無く、ゲストには失礼だった。もう根拠のない採点はやめ、みんなで歌の力を示してもらいましょうよ。
 これは余談だが、「ゆく年くる年」をはさんでの「年の初めはさだまさし」でMCのさださんが25分遅刻し、別の用件で現場にいた小野文恵アナが急場をしのいだのは、今年はハプニングが多い年だと予告しているようで意味深だった。