メッセージ: BS1NHKスペシャル「731部隊・
昨夏放送の「731部隊の真実」を視聴した際に、人体実験の残虐な実態と、立案・推進に関わった石井部隊長のその後の転身に、強い違和感を覚えたことを記憶している。
昨日のBS1スペシャルでは、ハバロフスク裁判の証言(音声記録)から、石井部隊長はじめ幹部が防衛・防疫を表看板にしながら、戦略兵器として細菌兵器の人体実験を拡大させていった真相を暴いている。
実験に携わったのは、当初、実験の総体を知らされないまま、自らの「仕事」に忠実に従事した優秀な医者や研究者であった。一方、石井部隊長たちは、攻撃兵器として細菌兵器の開発が喫緊の課題とし、実験の規模を拡大させている。関東軍の山田総司令官もその報告を受けていた旨を裁判でも述べている。
番組では、裁判の音声記録をあまり編集しないで丹念に再生されていて、被告となった隊員たちの残虐極まる実験の証言と、彼らが犯した罪の大きさにおののき悔悟の情が、言葉と言葉の間の息遣いや、心の葛藤までも見えてくるように受け止めることができた。 また、実験の拡大に伴い働き手の不足を補うため、頭脳優秀ながら進学できない少年たちをあつめ、その向学心、向上心や愛国心を煽り、少年兵として下働きに使役したことにも怒りを覚えた。
さらに、ソ連参戦の際、石井部隊長等はいち早く日本に逃げ帰り、大学教授や医者など社会的地位を確保できたのは、持ち帰った実験データをアメリカに提供することで免罪され、米ソの冷戦が背景にあることは描かれているが、なぜ、日本国内でこの大罪が追及されなかったのかが、番組からは物足りなさを感じた。同様に山田関東軍総司令官も帰国を果たし、家族に歓待され鳩山首相にも面談しているが、その罪は?とも思った。
番組内で幾度も部隊の記念写真が出てくるが、最前列・中央で白いチェアーに無表情で座る昭和天皇の姿に、あの時、いつの間にか、ごく普通の人たち・家族が戦争に巻き込まれていった、悲劇を忘れてはならないことを、きなくさい臭いがが漂う今こそと思う。
細菌兵器の原罪が、裁判の音声記録とアメリカの公文書により明らかにされたことは、番組スタッフの綿密な取材とていねいな構成でみごたえのあるスペシャルであったと思います。このところの「記憶」「記録」にないとうそぶく、政治家・官僚にも一撃をとも思いました。 投稿:2018年1月22日(山)